「あるじなしとて」 感想
(画像は版元ドットコムより)
「あるじなしとて」著者:天津 佳之
ものすげ~~~~~~~~~面白かった。
前半部分は描写が綺麗で全然ページが進まなんだ。
そして中盤あたりから後半にかけては、早く先が知りたくてノンストップで読んだ。
私の中にいた、菅原道真がびしっ! と決まった。
そう……そうなんよ……(読了後なので浸っている)
今回は図書館で借りたけれど、そのうちちゃんと買う。
手元に置いておきたい作品でした。
菅原道真といえば、怨霊、学問の神様、というイメージ。
そこにストーリーが加わった事で、人としての形を成した。
私は詩のこと言われてもピンとこないからね……、ストーリーがあってようやく理解出来た感じっすね。
おこりっぽくて生真面目なところが物凄くイメージ通り。
真面目ってのは思ってた。
バンケツでいうと親愛70の
「俺に立場を、名誉を与えてくれた――それがどれ程の事なのか、お前には分からないだろうな。感謝しても足りない位だ。」
これ好き。
立場と名誉。
これを与えるってことは、ミチザネを正しく運用したってことでしょ?
好きだから頑張りたい、ってより、自分の能力を生かしてくれる喜びを伝えてくるミチザネの部分ってめちゃ好きね。
本来力はあるのに、くだらないこと、愚かな者に足を引っ張られて、ままならない感じ。
そういうのって能力がある人はがっくりきちゃうよね。
適当でいいや~な人なら良いけれど、それだけの努力を積み重ねてきた人間には、燻っている時期って拷問されているのと同じだけ苦しいと思うのよ。
だから独神と会って、しっかりみっちりミチザネが働けていると、なんちゅーかね、嬉しいね。
その信頼あっての情愛。
上司として、同じ目標に向かう仲間としての絆。
それがミチザネ夢の美しさだと思うのよね、個人的には。
あの嫌味なところもさ、すばらしい詩を書けるひとだから、
それだけ感受性も豊かだし、頭も回るし、重箱の隅をついつい突きたくなるでしょ。
なんで他の奴らはこの程度のことに気づかないんだ?(苛つきマックス)
はぁ……(浸っている)
この話ってまずは国司として讃岐にいくところからなのね。
ずっと京にいた人間が讃岐よ? 四国よ? どういうところか知ってる?
香川県。水不足ばっかりよ。CMでしょっちゅう水不足だから大事にしてねと流れるような土地よ?????
そんなところに行く菅原道真。
そこで実際の国の姿を見るんだな。そこから何を感じるか。どう変わるのか。
「あるじなしとて」はそんな話。
比喩表現少なかった気がする。
後半は淡々としてたかな。
あと政治の話だから、判らない用語が沢山出る。
判らないまでも読めるけれど、判っていた方が楽しいかも。
知らない言葉でも、サァーと読んでしまえるなら、かなり読みやすい部類の本だと思う。
少々名前忘れても読めるし。
……とにかく良かったなあ。
浸っているから上手く言語化は出来ないけれど、とにかく良かった。面白かった。
人間味がある描写だったんよな……。
小さな所作が、ああこれこの性格でこういうひとならやるわあ~、って説得力があるっていうの?
だからがっつり読めたんやなあ……。
他に読みたい本。
・泣けない竜は愛を捧げる
・晩秋行
・怪奇幻想の文学1 怪物
・ラブカは静かに弓を持つ
・俺ではない炎上
・愛とためらいの哲学
・なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない
・うつくしが丘の不幸の家
・十歳のきみへ 九十五歳のわたしから
・人でなしの櫻
などなど……。
クジラのもよみたいし、夜に星を放つもよみたいし、
心の中で大量の本を積読中。
……面白かったなあ……。